『ベイビーステップ(Baby steps)』勝木光

 最近の展開のおかげではまりだした、週刊少年マガジン連載中のテニス漫画。この前8巻まで大人買いしました。やったね。
 とにかく地味。面白いんだけど地味。悲しすぎるぐらい地味。
 でも、読めば萌えるし燃えるしジンワリ来るし、まさに売れない良作です。
 というわけで、今回はベイビーステップについて。
 主人公、ストーリー、絵柄の順で話していきます。最後は個人的な感想。


 まず気に入ったのは主人公です。
 主人公が努力や根性だけに陥らず、といっても単なる身体的な天才設定を前提に据えるような愚行はしない点です。どちらに転んでも、既存のテニス漫画にありがちな必殺技やらインフレやらが発生してしまう恐れという問題があるからです。
 主人公に持たせる能力は、眼と頭、意思。球筋から相手の動きや表情を観察する眼、そこから得た情報を的確にまとめ、運用していく頭。そして何よりも意思。一つのことを継続する力、決断する力、テニスに関わっている最中における主人公の意思の強さはこの漫画の魅力を大いに引き上げています。
 テニスの成長速度も爆発的というほどではありません。最初は中々伸びない。少し伸びて大会。そのあと1年経過して一定の成長。そこから更に……といった感じで、上記の3つの力により、効率よく成長を続けてはいるものの、酷く漫画的過ぎる3ヶ月程度でプロ級といったこともありません。本当に地道な積み上げ式の漫画になっています。
 試合においては、勝ったり負けたりの展開。下との対戦は基本的にあっという間に終わってしまいますので、ランクが上の相手との試合が描かれることが多くなっています。上の相手に対して、眼と頭を駆使してにじり寄っていく展開がガッツリ嵌ったのですが、華が足りないのが泣き所です。
 テニス以外の展開では、高校やら恋愛やらのパートも用意されています。理性的でありすぎるがゆえのもったいぶり方。こちらもまた地道に描かれています。
 以上のように、本当コツコツと積み上げる主人公なのですが、平凡な優等生設定のため、取り立てて顔がいいわけでも、体格がいいわけでもありません。ですから、当然のごとく読者の目を引く要素が劣っているのは否めません。1巻に比べると大分、顔も格好良くなってきた(可愛くなってきた?)と思うんですけども、やっぱり普通過ぎるという問題があります。


 ストーリー展開は極めて親切丁寧。
 テニスの面では、無駄にキャラを消費することも登場させることも無く、主人公にとっての大きな目標、または超えるべき壁を的確に話の中に織り込んできており、無理の無い展開を可能にしています。分かりやすく、破綻をきたすことも無く、大きく矛盾を起こすことも無く、必要最低限の面子を一つ一つ送り出していく丁寧さを感じさせます。
 その他のパートにおいても、嫌味の無い友人や分かりやすい委員長キャラ、そしてヒロインなど、あらかじめ面子を絞っておくことにより、無闇矢鱈な関係の構築を防いでいます。おかげで、テニスに集中しながらも、ある程度学生としての立場や関係性を最低限表現し、親しみやすさを増していると思います。


 絵柄は正直言って映えません。男子テニスですが、登場するキャラクターが格好いいとかそういうタイプではありません。作者自身が「美形」を描くのが苦手だと認めてしまっているぐらいです。キャラの描きわけは十分になされているのですが、それより上ということはありません。一方、女の子は結構可愛い。しかし、男子テニスなので表に出てくる人数が致命的に少ない上に、出てくる回数も少ないのが辛い。
 女の子の仕草自体にはかなり魅力的なものを感じているんですけども……、今後に期待。
 でもストーリーをきちんと進めてくれるほうが良いです。テニスの動きにはなんら問題があるように感じません。迫力ある絵柄も時折見かけることが出来ます。ハッタリが利いていないのが物悲しいんですけど、出来は悪くありません。
 
 
 ということで、主人公、ストーリー、絵柄から魅力を考えてみました。地味ながらもピカリと光る漫画です。ただ、やっぱり全体的に購買層への波及力が弱いため、あまり売れてない模様です。
 事実、売り上げも2万程度とかなりアレ(当日記でよく取り上げるとらぶるは20万程度)なわけです。読める漫画なんですけれども、典型的な「私は買わないが売れて欲しいものだ」状態になってしまっています。これは問題なのですが、といっても下手な打開策は漫画自体の魅力を殺いでしまう可能性がありますし、難しいところですね。


 ではここからは個人的感想。
 エーちゃんが可愛すぎるのであります。この漫画のヒロインは間違いなくエーちゃんなのです。燃えて萌えてジンワリ来る、この三拍子が揃ったエーちゃんはまさしく最凶というほかありますまい。試合パートの格好良さには見習うべきところが大いにありますし、恋愛パートでのへたれ加減は大いに萌えるのであります。感情から思考、行動に至るまで見ている側と一体化できる辺りが素晴らしいですね。
 なっちゃんは、チャイなっちゃん〜〜ずるいよの流れが素晴らしいですね。自ら動こうとせず、楽して相手の感情を引っ張ってこようとするエーちゃんに対する痛恨の一撃。学園祭からここまでの流れは恐るべきものでした。加えて、他の仕草も魅力的、67話の結んだ髪を解きながら「勝ったよー」にはもれなく沈没しました。天分的に、相手の気持ちに対する入り方を弁えてもいますし……。とにかくやばかった。
 いいんちょ(佐々木さん)は、不遇キャラ一直線。めがねキャラとしては久々のヒットじゃないかしらと思います。景山とのコンビも上手く成り立っていますし、学生生活につなぎとめるバイプレイヤーとして存在感を示しています。これからも頑張って欲しいものです。
 現在のランキング
 エーちゃん>いいんちょなっちゃん>>その他(ランキングは予告無く変わることがあります)
 マーシャのランク付けは一応アメリカ編が終わってからということで。
 打ち切りとか……無いよね?
 どうにか5倍ぐらい売り上げる方法が見つかれば良いのに――――
 当日記はベイビーステップを今後も応援していきます。


 ではまた、たぶん『ToLOVEる -とらぶる-』の感想で会うことになると思います。モモ編はちょっとのどにつっかえた感じのする回だったです。そのことも含めてまた今度。
 とらぶると書いたのはとらぶるの読み手にも読んでほしいからだってばよ。そもそもこの日記を読んでる人が少なすぎるというオチは許してください。

ベイビーステップ(8) (講談社コミックス)

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ベイビーステップ(6) (講談社コミックス)

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