多彩な牛と多彩な育て方と美味い牛肉とステーキ『ステーキ・レボリューション』

フランス映画だが、導入は「フランスの牛肉はまずい」から始まる映画。
アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、イギリス、フランス、日本、スウェーデンと美味い牛肉を求めて旅をする。
美味い牛肉で美味いステーキトップテンというのをやってはいるが、あくまで添え物に過ぎない。
この作品では、
・牛をどうやって育てているか
・どのように育った牛を出荷するか
・牛肉をどうやって調理するか
を世界あちこちの畜産農家精肉店、料理店をめぐって見ていくことが本題だ。


飼料は穀物か、牧草か
放牧か、厩舎か
出荷する年齢は何歳か
雌牛か、雄牛か、去勢した雄牛か
など国によって異なる姿が見られる。


ただ、制作者の中で一つだけスタンスが決まっているのは
・牧草で育てる
という点だ。その方がエコロジーだからという。
味の面でも、穀物飼料を食べている牛は肉質や風味が牧草を食べている牛に比べて劣っているとのことだ
実のところエコロジーなのかどうかは分からないが、味の面は理解しやすい。


日本の牛では神戸牛と松阪牛が出てきた。
松阪牛のステーキは絶賛されていた。よく言われるところの「溶ける」「消える」という表現でだ。
トップテンの中の3位に入っていた。
ただ、牛の育て方については穀物飼料を与えてるところがあまりお気に召さなかったがようで、
最後に「エコロジーではないね」と一言残している。


1位になったのはスペインの牛。
牧草は食うわ、穀物は食うわで更に10年レベルで育てている。
作中に出てきた牛は2トンもの巨体となっている。凄まじく高そうだ。
よく生活出来ているなとも思える。
作中の初っ端に出てきたアメリカのステーキ店(非常に美味しいステーキを提供する店)の社長もびっくりである。
30ヶ月で出荷される牛を主に取り扱っているその店のスタイルと、スペインとはどうしてもそぐわない。
所謂牛肉ってこういうものでしょというのがホントに狭い範囲の話なんだと思えるシーンだった。



他にも
・ブラジルで育てている牛はブラジル人も美味い牛とは思っていないが、この牛しかブラジルでは健康に育たない
アメリカの農務省は大きな牧場の牛を管理するのに手一杯で小さな牧場まで手が回っていない
・季節によって食べるものが変わるから、牛の味も変わる(どんぐりを食べるとヘーゼルナッツの風味になるらしい)
とかその辺の事情が盛り沢山の内容だし、何よりも世界の牧場の景色が見られるのが良い。
まあ映像の出来はお察しではあるのだが……。
なお、オーストラリアや中国から東欧までは出番がなかった。
この辺の牛はどうなんだろうか。


美味い肉ってなんなんやろうなあと思える美味しい映画だった。