『モンキーターン』第17話 盛り上げどころ、見せ所を押さえた作り

サブタイトル:ついに優勝戦!
脚本:ほそのゆうじ
絵コンテ、演出:ほしかわたかふみ
作画監督奥田淳

17話冒頭のシーン
左から右に画面がPANしていき、ロッカーを閉める手が右側からイン。
閉めると、すぐに右側ヘアウト。
画面移動と登場人物の動作が一体となって左から右の流れを作った後
画面切り替えて外。左から右の流れに沿って、
人が左から右へ歩いているのが目にとまる。
求心的な図のため、当然のごとく人に目が向かう
二人がアップに、洞口父(左)と競艇記者山口(右)と判明。


山口が話しかけるも無視。
ただその一言が洞口父の気に触れ、洞口父止まる。
そこから山口振り返って、すかさず画面切り替え。
二人の位置は逆になるが、きちんと手順を踏んでるから
画面は全く問題なく繋がっている。
艇によって遮蔽され、二人に視線が集中する。


洞口父振り返って、すかさずアップ気味に。
左下から右上の流れが動作とともに右上(身長が高いため)の
山口へと繋がる。
受けの山口。
微動だにしない。
山口は質問を続ける。
目線をそらす洞口父。


そこで一度カメラ切り替え、何故か神棚。
と思ったら、そこに波多野が通る。
洞口父と山口の話の議題が波多野だった。
全く思わぬところで現れる波多野の姿。
しかも分かりやすい表情を取るように。
如何にも通りますよという高さではなく、通ることの意外性を含んでいるこの高さ。
素晴らしい


カメラ切り替え戻る。
山口の話が終了。
洞口父の回答。ここできちんとPOVを用いる。
他は肩越しショットや横のショットを使っていたのにここでPOV。
洞口父の回答を真っ向から感じることが出来る。
ここぞというところのPOV。
返して山口の表情。パーツになっているのもいい。
これで十分だからだ。


会話終了。
離れていく洞口父が考えを巡らすと、
洞口父を白に周囲を黒にする。
ここで先のレース(山口に訊かれた内容)に考えを巡らすのが
はっきりと見える。
一人の世界であるため、周囲の景色は邪魔となる。
白と黒の使い方。
そして白一色になり、画面切り替え。
問題となっている本人が最後に映り、シーン終了。





二つ目は、波多野が榎木にペラを見せてもらうシーン。
ここは、
中段のペラを見続けている波多野と左で動かず話し続ける榎木。
ここの構図は「スタート事故」のボードなどの長方形を中心とした背景が綺麗に空間を作っていて非常に見やすい。
榎木が無駄に動かないため、波多野の動きだけに目をやることができ、負担が少ない。


あと、最後の榎木が寄ってくるところがいい。
固定されたカメラ位置で、動き出し、表情が消えたところで
Aパート終了になる。
人がいなくなる。
というのは、ただ単にフレームアウトすることじゃないと。
表情が消え、体が埋め尽くすとその圧迫度合が、画面切り替えを迫る。
カメラを掴まれるような緊張感とも言えるだろうか。
締め方が良い。






レース直前のシーン。待機室。
まず、このカット割り。
レース場→エンジン→ランプと全てが動いていない。
まだ始まっていない。ということ、
もうそろそろ始まるのだ。ということ
の2点。
そして本番控室に至る。
この静謐さがビシっとキテる。



続けてまだ控え室を外から映し、左から右へPAN
窓枠が非常に良い仕事をしている。
合間に波多野(この時点では波多野であろう)の緊張が伝わるショットを混ぜる。
そして一人だけ姿勢が違う男がフレームできっちり区切られて映る。
更に正面ショットを混ぜて
またPANに戻し、最後右端まで言ったところで
再度正面ショット。ここで引いて、初めて波多野だとはっきり分かるように。


画面切り替え、波多野を再奥にした画面。
榎木が目を開け、波多野へ目をやる。
この動作が波多野へのアップを可能にしている。
POVのような役目を果たしている。
波多野の姿を映す。
置かれている状況を映す。
一瞬、思考の世界へと飛ぶ。
暗くなり、現実世界へ。
周囲の人間は動く、最後に波多野が動き。
画面切り替えて終了。







最後、レース場にレースが戻ってきた。
特にこのランプ。先程は消えてたランプである。
この前のシーンで、ランプを捉えていた意味がきっちり利いてきている。
各々がエンジンを起動させる(省略)
一人手間取る波多野。
手が震えて、引けないのである。
ここで波多野を背中から映す。
前方にあるポール、微妙に真後ろからずれている点から
波多野がまだ迷いの中にいる。
心が震えていることが分かる。
両手でつかみ、意を決して引く。
エンジン起動、手の震えが止まる。
そして再度、波多野の背中。
今度は何も映らないし真後ろから映されている。
精神状況に変化が見られることが分かる。
そして波多野は振り向く。
そしてヘルメットのシールドを下ろす。
下ろすと反射してコースが映り、
そこで画面切り替えてコースを映す。
ここが素晴らしい。
素晴らしい躍動感。
心踊らされる。




以上おしまい。




まとまってねええええ。