『ToLOVEる −とらぶる−』17巻限定版のDVDアニメ「ナナとモモ」

 「理性を完全に喪失したエロ」と「意識の拡散」が合わさった回。それでいて、その前提となる展開にも良いところは無し。
 OVA版5本の中では、一番悪い出来だと考えます。
 

 では、内容説明→考察→感想の順になります。
 今回もよろしくお願いします 



1.内容
(1)導入
 桜咲き舞う季節。結城家にはナナとモモが新たに同居人として加わりました。
 ある朝、リトのベッドに潜り込んでいたモモに、ナナが訊ねます。
 「あんな男のドコがいいんだ。弱っちいし、優柔不断だし」
 リトの良さが今ひとつ理解できないナナは、モモの提案により、リトの後をつけることにしたのでした。


(2)学校編
 二人は、リトの学校生活を監視することにしました。
 すると……、

  1. 登校中、空き缶ですっ転び、ララ、春菜、お静のスカートの中が見えてしまう。
  2. 教室でルンに抱きつかれたまま倒され、、思わずララと唯の胸に手が行ってしまい、結局唯にはたかれる。
  3. 階段にさしかかると、今度はヤミのパンツが見えてしまい、ヤミに追われる。
  4. 体育中に、ナナとモモが出したギガ・イノシシのギーちゃんに吹っ飛ばされる。
  5. 下校中、突如下から現れたシバリ杉に縛られる。
  6. 何かやってしまい、沙姫たちに追われる。

といつもより3割増しでヒドイ目に会っている光景を見ることに。
 一つとして、リトの「良さ」なるものは発揮された形跡がなかったため、ナナはダメ人間だと考えます。
 しかしモモはまだリトには能力があると考えているのか、引き続き調べることにするのでした。


(3)花見編
 同級生および下級生ヒロインほぼ勢揃いの状況。
 モモは杉谷さんという名の杉をデダイヤルから呼び出します。杉谷さんの花粉は、抑圧された精神を解放させ、隠れた本性を露にするのです。
 花粉を使って、リトの本性を暴こうという作戦でした。
 しかし、実際に掛かったのは、ララを除く女性陣、そして以下で露になった本性?

  1. 春菜 ― 喜怒哀楽が非常に激しくなる
  2. 唯 ― 性欲の解放、露出癖の発生、リトへの思いの爆発
  3. 美柑 ― リトへの思いの爆発
  4. ヤミ ― 温泉
  5. お静 ― イタズラ心
  6. ルン ― キス魔、前後不明瞭

といった結果
 ただし、リトだけはまったく効果なく。モモは裏表のない人間だという考えに至るのだった。
 その後に、色々あってナナは少しリトを見直しましたとさ。


2.考察
 最初に書いた
「理性を喪失したエロ」
「意識の拡散」
について、もう少し深く書き、次の感想でまとめます。
(1)「理性を喪失したエロ」
 まず、こちらからです。今回の話ではヒロイン陣が理性を失い、エロに進むという話の展開でした。
 もちろん、この話の進め方が悪いというわけではありません。それらは、原作漫画においても、時折発生しています。
 例えば、全体的に理性が失われた話について考えてみます。確認するに、第40話〜第41話(第5巻収録)のバレンタイン話、第129話(第15巻収録)のセリーヌの花粉話。これらはどちらも惚れ薬もしくは花粉による好意の伝染による理性のたがが取り外されたドタバタ話でした。
 個別のヒロインまで枠を広げて考えると、他にも、第158話(第18巻収録予定)のセリーヌ花粉を被ったヤミの話、第140話(第16巻収録)の超ドSになるガスを浴びた春菜の話、小説版の唯の話、第30話(第4巻収録)のコロット風邪に罹ったララの話があります。これらは、個別の性格の変化、人格への影響話です。
 こう見ると、アニメ版だけが理性を失った状態に陥る話を書いているようには見えません。
 しかし、考えてみましょう。原作のとらぶるは全162話あるのです。162話の中で、全体的、個別的事例を合わせたとしても、6話(小説版を含めると7話)です。比率にしてみると4%足らずにしかならない。
 つまり、とらぶる世界の基本は「理性ありき偶発的エロ」なのです。


 更に、全体的事例について、今巻のアニメと異なる点について考えてみます。
 第40話〜第41話のバレンタイン話は、前半の第40話では全体的に襲ったり襲われたりのエロ描写の拡散が見られます。ですが、後半の第41話に移ると、話と描写は一気に狭まり、個別的な問題になります。人員は2人、リトと春菜のみ、場所は体育倉庫。密室で2人という状態になるのです。春菜がリトに迫るというただ一つの行為を描くため、場所と人を狭め、主人公のみに向けたエロ描写に持っていったわけです。
 次に第129話のセリーヌの花粉話です。こちらは逆に、最初はリトと唯、セリーヌという個別的な状態で始まったのが、花粉の影響により、周囲の全員がリトに好意を持ち、突撃してくるという話です。この話では、個別から全体へと話が膨らんではいます。しかし、個別から全体に移った後も、あくまで意識を向ける目標はリトのみに絞られているという点に注意が必要です。
 以上から、共通項を探すとするならば、「主人公への集中」つまり「主人公第一主義」でしょう。
 ここで、第2の問題「意識の拡散」に話が繋がります。


(2)「意識の拡散」
 ということで、もう1つの問題に移ります。
 ここでは、「集中と拡散」、「意識」の2つを使って考えて行きたいと思います。


 主人公が、エロをエロと認識するには何が必要かと考えるに、まずは認識すること、つまり「意識」を対象に合わせることが求められます。
 例えば、主人公(ラブコメ系)のすぐ後ろで眉目秀麗ナイスバデーなお姉さん(性癖に合わせ年齢や体形変更可)が服を脱いだとします。服を脱ぎます、更に脱ぎます。主人公が気づいていないという前提を置く場合、主人公はエロいと感じるでしょうか。
 普通に考えれば、感じないと思います。気付いてないからです。意識が裸のお姉さんに向いていないからです。
 では、意識を向けるにはどうすればいいでしょうか。
 簡単な手段は、ピタリと身体を主人公にひっつけることでしょう。こうすることで、否応なく意識を向けざるを得ません。
 こうやって、主人公が意識を向けたとき、初めてエロがエロになるわけです。
 また、この例は、エロの対象となる女性側も主人公へ意識を向ける必要があると示しています。
 要するに、基本的には主体と対象の意識が交差して、エロは正しく認識されるのです。
 ただ、一つ例外があります。ノゾキです。ノゾキにおいては、意識は一方のみになります。相手側が認識していると、ノゾキにならないからこれは仕方ありません。相手側の意識なく成立する数少ない事例です。


 意識の交差は、「集中」させることに繋がります。
 例えば、扉を開いたら着替え途中の女の子がいました。相手はこちらを見ています。こちらも相手を見ています。数秒間交差する視線、これが「集中」になります。
 空き缶ですっ転んで女の子を押し倒してしまいました。ついでに胸を揉んでいました。こちらと女の子の間には視線が交わります。これも「集中」です。
 つまり、「集中」とは、相互で意識や視線が交わっている状態、エロを認識している状態という意味です。
 一方「拡散」はその逆で、意識や視線があちらどちらに散らばっている状態になります。
 「拡散」が起きると、エロはまともに成立しなくなります。ワイワイガヤガヤと賑わってはいるものの、主人公へ向けられたものは少なく、また主人公も認識し難くなってしまうのです。
 これが更に進むと、最終的に主人公は置いてけぼりをくらい、サブキャラのような立場に追いやられてしまいます。当然、エロをエロと認識するわけもなく、ただただ慌てふためくか、暴走するようになってしまうのです。


(3)まとめ
 「理性を喪失したエロ」と「意識の拡散」が組み合わさると、偶発的エロはおろか、普通のエロすらまともに成立しません。
 裸は出ますが、文脈上に上手く収まらないため、見ている側としては嬉しいどころか覚めた視線で見てしまいます。
 最低でもどちらかはないと、見所がカオスさになってしまい、本来の目的から大きく乖離したものになってしまいます。


 個人的には、偶発的エロを基調としたとらぶる世界観を組み上げるにおいて、上とはまったく逆の2つの要素、つまり「理性あるエロ」と「意識の集中」は重要だと考えています。
 もちろん、どちらかをすこし削ることによって、本来とは違った視点から話を展開することができるので、絶対に必要であるとは言い切れません。
 ですが、まずは基本の要素をしっかりと抑えた話作りをしていった方が、受け入れやすく理解しやすい話が出来上がるのではと考えました。



3.感想
 色々単純なことを分かりづらく書いてきたわけですが、半分ぐらいは「自分の考えるとらぶる」への執着で出来上がっています。
 ただ、アニメ版を見てて(TVアニメ版も含めて)、ずっと思っていることがあります。
 1つ目は「どうして、そんなに賑やかにしないといけないのだろう」ということです。メディアの違いを考慮に入れたとしても、そこまで飲めや騒げやのどんちゃん騒ぎのようなないようにする必要はないんじゃないかと思っています。ラブコメと言えど、そこまで騒がしい作りにする必要が有るのかな?と疑問を持っています。
 2つ目は「無理に多数のエロを入れる必要はあまりない」ということです。商品展開上、より多くのターゲットを狙うために総覧的なエロを入れているのかなと考えていますが、むしろ無理に描写を突っ込んでいることで、全体的に不満さが上がってしまってるんじゃないかなと。もう少し、エロだって絞っていいんじゃないのかな。


 今回の話を見ると、原作漫画をツギハギしつつ、新しい要素を投入して……作りになっていたんですが、ストーリーに纏まりが無く、ツギハギ感はそのまま残っていて、今ひとつでした。追加された新しい要素もTVアニメ版でお馴染みの暴走関係で相変わらずだなあと思いました。
 もっと予定調和に詰まらなく(脚本家的に)作っても、十分な出来になりそうな気がするんですが、どうして面白く作っちゃうんだろうなんて考えます。


 今巻については、私としてはオススメしません。裸はありますので、それで十分なら十分かもしれません。
 花見回は中々よく出来てて好きだったのですが、今回こんな感じで使われたのは残念だなぁと。まあそれもアリといったらアリですね。
 ってことで、今回は終わりです。
 何か上手く纏まってなくて申し訳ない。


 では、また次巻で、と言いたいところですが、次巻を買えるかどうかは非常に不透明な状況です。
 もしかしたら、今回で終わりかもしれません。
 でもとりあえず、ではでは。

4.補足(twitterより抜粋)
(1)本文補足部分

  1. まず、花粉設定から変なんだよなぁ。「本性が露に」だと変だし、「抑圧された欲望が解放」でも反応がオカシイ、「単に酔っ払っている」にしても酒癖が悪すぎる。「性的に明け透けになる」ぐらいにしておけばいいんじゃないかと思う。それでもあそこまで変な行動はとらんだろうけど 約2時間前 from Tween
  2. リトに花粉がきかない→裏表のない性格だからだ。抑圧されてないからだ。ってのも微妙。裏表や抑圧なしにララや春菜と関係を構築してるとはとても思えない。てか、キャラ設定的には建前もかなり重視するタイプだと考えるんだけど。それ以前にララですら建前と本音、それに伴う抑圧はあるだろと言いたい 約2時間前 from Tween
  3. ナナが最後枕を持ってリトの部屋に向かうのもなぁ。急変しすぎ。ベッドの中で思い出して悶えるぐらいにしておく。そして朝、気になって部屋に行ったら、ララとモモが寝ていましたぐらいにしておくとまだ妥当性が高く感じる。それにしても、展開の妥当性のために展開を考える自分はダメダメだのぅ 約2時間前 from Tween
  4. それはそうと続き。登校から教室に至るまで、ララがリトにひっついて離れないのは前回のくえすとの延長線上だからという理解をすればいいのかなぁ。でも別にひっつく必要はないのでは。唯に注意、スッ転んで胸に手を触れるまでの展開都合としても、普通に話して普通にすっ転び普通に触れば十分じゃない 約2時間前 from Tween
  5. 再び花見Bパートについて、主人公だけいい思いをするという考え方からはちょっとズレてるんじゃないか。暴走しすぎでいい思いも糞も無くなっている。最後リトをほっぽらかしでワイワイやってるのがその典型。どうしようもなく違う。てか酷い。ほっぽらかすならほっぽらかすで、やり様があると思う 約2時間前 from Tween
  6. 暴走させたなら、そのシーンは見せないで結末だけ示したほうが心地よい。「臭いものに蓋」するのは創作上悪い選択かというとそうでもないし。蓋をした分、人数と空間を絞って、話を進めればいい。暴走だけした回という評価でなく、焦点を絞った話の進められた回にできる。 約2時間前 from Tween
  7. 原作花見回は、ナナが「恋ってなんだろう」と考える回。ナナは色んなヒロインに話を聞くもあまり分からない。最後にとあるトラブルでリトに抱きかかえられ、一瞬「恋」の概念に触れるもやっぱりまだ分からない。という回で私的神回だった。アニメはただのドタバタ劇で涙 約1時間前 from Tween

(2)初見時のメモ書き

  1. ぬぅ……。今回は微妙な出来な気がする……。混ぜ方のバランスが変なんだよなぁ 8:10 PM Feb 3rd from Tween
  2. 花見は最終回にもなりそうないいエピソードだったのに……このままでは勿体無い出来になってしまいそうで不安だ……。つまりはこういう展開なのか。ぬぅ……やはりアニメ媒体はよく暴走するのぅ…… 8:13 PM Feb 3rd from Tween
  3. ぬぅ……、自分の求めるエピソード的にはほぼ最悪の展開だ…… 8:17 PM Feb 3rd from Tween
  4. なんともいえない展開にするのはどうかと思う。あああああああ…………。もう駄目かなぁ 8:19 PM Feb 3rd from Tween
  5. 銀魂ならこれでも問題ないんだが……ね 8:21 PM Feb 3rd from Tween
  6. と、いきなり夕方になってもうた。どうしようもないのぅ。最後だけきれいに締めればいいってもんじゃないってばよ………… 8:22 PM Feb 3rd from Tween
  7. しかも最後もまた……、こりゃ完全に駄目だった今回の話は。懐かしい記憶を呼び覚ましてくれた大和屋先生ありがとうとしか言えん。 8:24 PM Feb 3rd from Tween
  8. 脚本大和屋絵コンテ太田か、トラウマセットっすなぁ……。最終巻に期待したいところだけど、買えないかもしれないんだよなぁ 8:26 PM Feb 3rd from Tween
  9. 求めてるのは総基地外化じゃないんだってばよ……。と、以上とらぶるOVA第5巻でしたとさ 8:28 PM Feb 3rd from Tween