『映画の文法』 今泉 容子(著)

 映画で用いられる撮影や編集の技術を取りまとめた本。
 ただ、ここで解説されているのは、あくまでも見る側の視点であり、製作する側ではありません。
 どんなテクニックが映画に用いられ、どのような効果を観客にもたらすか、またそのテクニックを用いて作られた映像から観客はなにを感じ取ればよいのか、について解説されています。


 特徴としては、2つあります。1つ目はショット分析です。ショット分析とは、
 映画を「ショット」という映像の最小単位に分解したうえで、ショット内の構成やショットのつながり方を調べる分析手法
とされています。要するに、映画のある一定の時間である1シーンを切り取り、それをショットと呼ばれる画像に落とし込み、並べる。そしてそこで使われている技法について解説するわけです。
 2つ目の特徴は、分析に使われる題材に、中々普段目にすることのない古い日本映画が用いられている点でしょう。


 解説されている用語は以下の通りです。これがどれほどのものなのかは、私には分かりません。そこまでがっつりと映画に触れたことがなかったからです。ですから映画に対する知識はそれほどないため、とりあえずこのぐらいありますよと羅列してみることになります。
 尚、この本の用語配列は50音順です。

文法項目
あ行
 アイリスイン/アイリスアウト
 アイレベル・アングル
 アクションの一致
 アングル
 動き
 エスタブリッシング・ショット
か行
 カット
 カットイン/カットアウェイ
 キアロスクーロ
 客観的カメラ
 グラフィックの一致
 グラフィックの類似
 クレーンショット
 クロースアップ
 クロス編集
 構図
さ行
 三角配置法
 視線の一致
 シャローフォーカス
 照明
 ショット
 ショット・リバースショット
 ショットサイズ
 シンメトリ
 スーパーインポジション
 スクリーン横縦比
 セッティング
た行
 タイトル
 ダッチアングル
 鳥瞰アングル
 ディゾル
 ティルト
 手持ちカメラショット
 登場人物の配置
 トラッキングショット
 トランジション
は行
 ハイアングル/ローアングル
 パン
 POVショット
 一八〇度線の規則
 開いた構図/閉じた構図
 フェードイン/フェードアウト
 編集
ま行
 マスターショット
 ミゼンナヌ
 モバイルフレーム
 モンタージュ
ら行
 ラックフォーカス
 連続編集
わ行
 ワイプ

以上になります。どんなもんなのでしょうか。見る側としてはこれで事足りるのかもしれません。
 他に索引として、使われた作品が作品別、監督別、原作者別、別年代別に並びかえられて、それぞれついています。


 ここからは感想になります。
 買った動機としては、単純です。
 話だけを追って、アニメやマンガを見てるのはどうかな〜と感じたからです。
 「話が・・・・・・、話が・・・・・・」と現状、特にアニメを見るに当たって話す内容が話の内容ばかり。これはいい加減おかしいんじゃないかと思いました。
 というのも、映像媒体なのに、絵の良さを表現するときも語彙が不足しているのか、「萌え(あんまり使わないですけど・・・・・・)」などの曖昧モコとした言葉でしか話せません。
 んなわけで、もう少し映像的な楽しみを感じられるようにしようと考えまして、今回この本を買ってみたわけです。
 読んだ感想としては、無意識に感じていたことが言語的視覚的に明確化されたのがよかったかなと。意味は分かっていても伝えることのできない内容をどのように伝えればよいかということが分かったのが一番の収穫です。
 ただ、でてくる用語をむやみに使ったとしても、感想として読みやすいか、理解しやすいかというと別なので、そこはまた考えないといけないと感じました。要は工夫次第と言うことです。


 その点で優れた方法だったんだなと感じたのが、サムネや画像を使った感想です。万の言葉よりも一つの映像とはよく言ったもの(誰が?)で、見せたいと感じる場面を切り取り、パッと提示し、解説すれば、一番そのマンガの良さ、アニメの良さを伝えられるのですね。
 まあ、問題が一つありまして、ゴニョゴニョな関係により、ブログ抹消の危機に陥るということなんですけどもw
 ここでたまに感じるのは、ただ映像を出しているという点に問題があるのではと。取捨選択をせず、パッと見の良さを上げるためにだけ、画像を出しているから余計に問題なんじゃないかと思います。
 必要最小限の画像を用いて、自らが感じ取った魅力を伝えることができるならば、もう少し大目に見てもらえるのではないかなあと。 見てもらえないかも・・・・・・。


 ところで、なぜ映画の文法を選んだかといえば、なんだかんだで一番歴史があり、関わった人もそれだけ多いのではと考えたからです。というのは表の理由で、アニメ方面から入るより、映画方面からみた方が差別化できたりしないかな〜というのと、本屋にたまたま置いてあったのを見かけたからです。
 おそらく最後が一番の理由だったり。


 今後映画も見るようにするの?と聞かれると、ここで書いてる人、最後に映画館で見た映画がREXという超映画音痴なんだけど、という話になるわけですが。
 ぶちまけて言うと、今現在もあまり映画を積極的に見ようという踏ん切りはついていません。これからもある程度の歳月はアニメを見続け、マンガを読み続けると思います。
 果たして生きている間に映画が趣味の一部になるのかどうか、それは分かりません。
 あ、なのは1st見に行くと思います。やったね!たえちゃん、映画が見れるよ。駄目だこりゃ。 


 そろそろまとめに入ります。
 悪くない本じゃないと思います。独自性はあるし、それほどムツカシイ記述もされていませんし。
 ただ、言語の文法以上に歴史が浅いせいか、映像の文法ってこじつけっぽいなあと感じることも。
 じゃあそれ以上に歴史の浅いアニメやマンガはどうなるんだろうとも思います。
 でも、一定の文法なるものはあるわけですから、それを押さえたうえで、自由に映像を見ていくのがいいのではと。
 なんたって作者が一番最初に引用した文がこれですし、

 「映画に文法はない」と日本を代表する監督のひとり、小津安二郎は語った。

 作り手も、観客も、文法に縛られず自由に作り、見ればいいわけです。その意味を伝えられ、その意味を感じ取れる限りは。文法は便法で、それ以上ではないのですから。


 となんか綺麗っぽくまとまったところで終わり。
 そこそこ面白かったんで、ちょっと頭に詰め込んでみたいなと感じた人にお勧めです。


 

映画の文法―日本映画のショット分析

映画の文法―日本映画のショット分析