『古典文法入門(駿台文庫)』

 駿台からずいぶん昔(1985)に出た古典文法本。
 いまどきの学参とは趣が少し違う。駿台らしい本。
1. 概要
 「活用」の部分を重視。膨大な「活用」の暗記を無味乾燥なものから意義のあるものへと。
 文法が解釈や読解に以下に役に立つのかを具体的に説明。
 暗記を最小限にすることで、思考の世界への導入を手早くする。
2. 構成
 全5章と付録で構成。
  まず総論編で、文法の意義を説明し、古典文法の世界への導入を図る。
  次に基礎編?,?で動詞や形容詞、形容動詞、助詞、助動詞の活用の習練を行う。
  基本事項をみっちりと学習したら応用編で解釈、読解に結びつく事項の解説を行う。
  あとは参考編で、入門を超えた内容、あくまで参考となる部分の説明。
  付録編では助動詞の活用と敬語の意味や訳の一覧表が掲載されている。
3. 評価
(1) 長所
 活用の練習を繰り返すことによって、きっちりとした知識を身につけられる。
 読解、解釈への橋渡しとなる内容が掲載されている。
 総論編、参考編が面白い。
(2) 短所
 文法全体を取り上げているわけではない。削られている品詞が多い。
(3) 総合評価と感想
 古典文法を総体的に扱った本としては使えない。あくまでも参考程度となる。もし使う場合は必ず『古文解釈の方法』へと繋げること。本書で取り扱っていない事項すべてが『方法』の中に収録されているため。
 一連の文法事項が終わって、違う観点から文法を見直したいときに読むぐらいでいい。といっても専門書には劣るかもしれないが。
 これ一冊で古典文法が仕上がることはない。
 今売れる学習参考書とはまるで趣が違うのでそこさえ注意すれば面白い本。
 参考書としての能力を考えると60点といったところ。読み物としてはお勧めできる箇所も多々あるのですけどね。

大学受験必修古典文法入門 (駿台受験シリーズ)

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