『大学入試最難関大への英作文―書き方のストラテジー(桐原書店)』

 本格的な英作文の参考書として最も売れた?『大矢英作文講義の実況中継』を書いた大矢復先生の著作。
 今回の本は入門編をすでに終えたある程度の実力を有する受験生に向けられたものです。
1. 概要
 正しい語彙を正しい語法や文法でつないでいけば、正しい英作文はできる。しかし、それは本当の意味で語彙や文法や語法を習得していると仮定しての話だと指摘しています。
 読解には読解の勉強を独自に行う。それは単なる単語の集積以上のものが、単なる文の集積以上のものが文章には存在するからである。ならば英作文にも英作文独自の考え方を身に付ける勉強があり、それが必要だ、と筆者は考えています。
 実況中継を終えた人、もしくはそれと同等の実力を有する受験生を対象にしたのが今回の本です。
 第1章で、受験生の文法の知識や語彙の知識を能動的に使えるように改造します。ここをしっかり学習すれば、ほぼすべての大学で通用する英作文能力が付きます
 以下は個別に大学別対策を示していきます。
2. 構成
 全部で3章構成。
 第1章では和文英訳の基本を身に付ける。問題数は40問、Instant Exercise(短文練習問題)がそれぞれに付いています。問題→重要ポイントの指摘と解説→練習問題→語句ノート→解答で各問題は構成されています。ほぼ全て2ページで収まるようにされています。
 第1章には更に、問題に取り入れることのできなかった英作文頻出語彙を、第1章の終りに「英作文頻出語彙集166例」として収録しています。例文と例文の解説が記載されています。
 第2章では長大英作文を取り扱います。これは主に京都大学大阪大学を対象としています。まずは概評にて傾向を分析、次に対策として3つの方法を指摘しています。その後、過去問15題を収録。個々に詳細な解説をしています。3つの方法と、各々のポイント、そして英訳例と解答例で構成されています。
 第3章では自由英作文を取り扱います。自由英作文を更に、東京大学的な要約英作文と、一橋大学などその他の難関大で出題される自由英作文とに分類しています。
 まず、要約英作文から始めています。概評で大まかな説明と傾向の分析。対策として2つの方法を指摘しています。その後、過去問を5題と予想問題を3題収録しています。2つの方法と各々のポイントを示し、英訳例に詳細な解説を行っています。最後に模範解答が載っています。
 次に、自由英作文の対策をしています。概評で大まかな説明と行っています。3部構成を推奨し、それぞれに対策を練っていきます。対策として6つの方法が挙げられています。その後に問題を11題、考え方を示し、英訳例や解説をしています。最後に基本的に解答例が載っています。
3. 評価
(1) 長所

  • 英作文の考え方が身に付く本。より良い答えの出し方が分かる
  • 解説が詳しく、納得して進めることができる。

 レイアウトがよく、学習しやすい。
(2) 短所

  • 難易度が高い。
  • 第3章「自由英作文」の自由英作文のところが薄い。

(3) 総合評価と感想
 第1章の出来は秀逸です。実況中継とこの第1章を身に付ければ、ほぼすべての大学で何も書けないなんてことがありえなくなります。
 第2章以降は志望校の方はしっかりとやってもいいですが、そうでない方はパラパラと見ていくだけで十分だと思います。自由英作文のところがもう少し詳しくなっていると良かったのですが、ここは残念な箇所です。
 英語に限らず、どの勉強においても理解が半分、暗記が半分の原則は通用すると思います。実況中継の内容とこの本の第1章を理解し、暗記すれば大学入試の観点で困ることはそう無いでしょう。
 でも、ほとんどの大学はここまで要求することはないので、時間が無い方は実況中継だけでも全く問題は無いです。少々難易度の高すぎると感じられることが多いでしょうから。
 今回は90点です。難しい英作文が出ない大学を受ける方は無闇に手を出さない方がいいと考えます。しかし、やはり良書でないかと、実況中継→最難関の組み合わせは素晴しいです。

大学入試最難関大への英作文―書き方のストラテジー

大学入試最難関大への英作文―書き方のストラテジー